相思相愛ですがなにか?
キャーキャーと目をハート形にして騒ぐ日本人に辟易したのか、アスキムは側近に着替えを用意させると、すぐさま別室にて装いを新たにした。
日本では目立ちすぎる礼装を解き、ジーンズにカットソー、ジャケットを羽織ると、観光にやってきた大金持ちのボンボンにギリギリ見えないこともない。
最初からこの格好で飛行機から降りてくればいいのにと思ったのは否めない。
アスキムを迎えに来たリムジンに乗って、空港から移動する最中、今回の来日の目的を尋ねる。
「それで、あなた何の用があって日本に来たの?私は結婚式の準備で忙しいんだけど?」
「そう、それだ」
アスキムはやたらと長い脚をアピールするように脚を組み替えると、さも当然とばかりににんまりと笑った。
「お前の夫となる男がどういう人物なのか興味があるんだ。紹介してくれ」
紹介してくれって……。
まさか……わざわざ伊織さんに会うためだけに日本に来たの?
カリウス王国から日本まで優に8000キロは離れているというのに、誰も止める人はいなかったのか。
ここで、ようやく私はアスキムがひとりで日本にやってきたことを不審に思い始めたのだった。