相思相愛ですがなにか?

「あなたルーはどうしたのよ?」

私はルーの所在を尋ねると、アスキムをジロリとひと睨みする。

まさか、ルーに黙って日本に羽を延ばしに来たんじゃないでしょうね?

アスキムが日本にやって来るというのに、ルーが同伴しないなんてありえないことだ。

アスキムがアクセルなら、ルーはまさにブレーキ役。

親であるカリウス王でもアスキムの行動を制限することはできないが、唯一彼はルーの言うことには聞く耳を持っている。

アスキムは猛烈なアプローチの末に口説き落とした日本人の恋人をそれはもう大事にしていたのだった。

ルーこと――嵯峨野瑠璃は英国留学時代の私の友人であり、アスキムの最愛の人である。

外国人との結婚が認められていないカリウス王国の悪しき風習と戦うために、ルーはアスキムと秘密裏に結婚してからは王宮ではなく離宮に居を設け、目下、教師としての職務に励みつつ、カリウス王国の女性の地位向上のために奮闘中だ。

愛する人のために祖国である日本を離れ身ひとつでカリウス王国に行く気概のあるルーには尊敬の念しかない。

さらに言えば、ルーとアスキムを引き合わせたのが自分である手前、浮気なんて絶対に許さない。

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