相思相愛ですがなにか?
「冬季緒さ、前々から温泉欲しいって言ってたよな?」
長い付き合いだけあって、情に訴えるだけ無駄だということは既に知っている。
だから、冬季緒の大好きなビジネスの話にしよう。
俺はブリーフケースから地図を取り出し、テーブルの上に広げた。
地図は分かりやすいように、ある一角だけ事前に赤枠で囲っておいた。
「研究所を建てようって用地買収したんだけど、地面掘ったら温泉出ちゃってさ。折角買ったし、いずれ発電所でも作ろうかなってそのままにしてある場所があるんだ」
地図を見せながら周辺地域や観光資源について説明をすると、冬季緒の目の色が見る見るうちに変わっていく。
俺が進めている先端医療研究所の建設予定地に温泉が湧いたのは本当にラッキーだった。
「ちなみにこれがその権利書」
最後に権利書を取り出しテーブルに置くと、冬季緒の苦虫を嚙み潰したような不満げな顔を拝むことが出来た。