相思相愛ですがなにか?
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「お会いできて光栄です。プリンス・アスキム」
「ああ、私も君の噂は方々で聞いている」
アスキムと伊織さんはお決まりの挨拶を交わすと、互いの友好を誓うように握手を交わした。
空港から1時間ほどかけて伊織さんの会社に到着した私達は、アスキムの念願通り伊織さんとの面会を果たした。
初体面は至極和やかなムードで始まったが、アスキムが変なことを言わないか、目を光らせておく必要がある私は気が気でない。
伊織さんに失礼なことを言ったら絶対に許さない。
そう目に力を込めてアスキムに目配せするが、わかっているのかいないのか。
ただ不敵に微笑むばかりでちっとも要領を得ない。
「口に合うかわかりませんが……」
執務室の皮張りのソファに座るや否や、秘書が淹れたての紅茶をテーブルの上に置いた。
「君のような素晴らしい女性が淹れてくれた紅茶なら、何でも口に合うさ」
アスキムは紅茶など目に入らないのか、秘書の手のひらを取るとそのままそっとキスをした。