相思相愛ですがなにか?

「これで気が済んだかしら?」

藤堂製薬を出てリムジンに乗り込むなり、肘掛に頬杖をついて、仏像のように黙り込んでしまったアスキム痺れを切らして尋ねる。

「月子、お前は本当にあの男と結婚するつもりなのか?」

「そうよ」

何か言いたいことでもあるというの?

「あの男は……本当にお前を愛しているのか?婚約者にしてはどこかお前に冷たいような気が……」

核心を突かれて、私は咄嗟に何も言えなくなってしまった。

……さすが、アスキム。

男女の心の機微には無類の嗅覚を持っている。

「月子、何か隠しているな?」

「別に何も隠していないわ」

「あの男、他に女でもいるのか?」

唯一無二の親友であるアスキムとルーに嘘をつくのは憚られて、イエスもノーも言えなくなる。

私の態度をイエスと捉えたのか、アスキムが呆れたように言う。

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