相思相愛ですがなにか?
「月子、私もルーもお前の幸せを願っているのだぞ」
「分かっているわ……」
アスキムが心配する気持ちが痛い程伝わってきて、いたたまれず彼から目を逸らす。
アスキムとルーほど私の幸せを願ってくれる人はいないだろう。
だから、政略結婚ということは伏せていたのに、完全に裏目に出てしまったようだ。
「お前を愛していない男と結婚して、この先上手くやって行けると思っているのか?」
「いいのよ。彼との結婚は私が決めたことなんだから。アスキムは余計な口出しをしないでちょうだい」
そう言うと、ここまで意固地な女は見たことがないとアスキムは口をへの字に曲げて、不機嫌を露わにした。
「そんなことより、私達はどこに向かっているの?」
話題を変えるようにリムジンの行き先を尋ねると、アスキムはさも当然とばかりにこう言った。
「秋葉原だ」
「秋葉原?」
「私は日本にマンガを買いに来たんだ」
買い過ぎてルーに怒られないといいけど……。
秋葉原に到着すると、さあ来いと腕をずるずる引きずられるようにして、リムジンから降ろされる。
その日、私は伊織さんの想い人のことを考える暇を一切与えられず、マンガ好きのアスキムと一緒に秋葉原の本屋をはしごする羽目になったのだった。