相思相愛ですがなにか?
「専務。お電話です」
「……後にしてくれ」
報告書を読むために集中力を切らしたくなくて、居留守を使うように片山くんに指示をだす。
「それが……」
優秀な片山くんが俺の意図を汲めないはずがない。
しかし、彼女は困ったように口元に手をやると、取り次ぎの電話をどうするべきか判断に苦しんでいる。
やむを得ず報告書を脇に置き電話に出ると片山くんが言い淀んだ理由がすぐにわかった。
「私だ」
「プリンス・アスキム?」
名前を名乗らずとも、王族らしい威厳のある声色は電話でも隠し切れるものではない。
「月子のいないところで話がしたくてな。今晩、時間をもらえるか?」
……まさか、あちらから招待があるとは思わなんだ。
「構いません」
俺は月子ちゃんの婚約者として、この全面対決を正々堂々と真正面から受けて立ったのだった。