相思相愛ですがなにか?
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アスキム王子の呼び出しに応じた俺は、彼が日本での定宿にしているホテルに来るように指示された。
ホテルに到着し、フロントで待ち伏せしていたアスキム王子の側近に案内されVIP専用のエレベーターに乗り込む。
アスキム王子は世界でも名だたるVIPしか止まることの許されないエグゼクティブスイートルームに宿泊していた。
部屋に入る際にも護衛の者から厳重なセキュリティチェックを受け、俺はようやくアスキム王子にお目にかかることができた。
「警備の者がすまないな」
「いえ。あなたの身分を思えばこれくらい普通のことですから」
最初は母国語でもない日本語を流暢に話すアスキム王子に戸惑ったが、二度目ともなるとそう驚きはない。
一体、どこで体得したのだろう。
日本に精通しているという情報はなかったはずだか。
まさか……月子ちゃんのために覚えたというのか?
「座ってくれ」
アスキム王子は俺がソファに座るのを見計らって、傍にいた側近と目で合図を送った。
側近たちはアスキム王子に恭しく頭を下げると、彼の意向通りひとり残らず部屋から出て行った。
つまり、これからする話は側近はおろか警備の者にも聞かせたくない話ということだ。