相思相愛ですがなにか?
「こらっ!!待てっ!!」
俺はプールの中をスイスイと泳いで逃げていく月子ちゃんの後を水を掻き分け追いかける。
水泳が得意ではないとはいえ、彼女に後れをとる俺ではない。
「捕まえた!!」
俺は月子ちゃんの背後に飛びつき、動きを封じるように背中から羽交い絞めにした。
「やだ!!伊織さんったら捕まえるのが早すぎるわ!!」
月子ちゃんは、楽しそうにアハハと大きな声で笑った。
今この瞬間は、婚姻届のこともアスキム王子のことも忘れ、恋人同士のように大いにはしゃぐ。
このまま時が止まってしまえば、どんなにいいだろう。
「あの……伊織さん……」
上目遣いで俺を見上げる月子ちゃんの視線でふと我に返り、素肌が露骨に想像できる水着の上から身体を密着させていることに気が付くと、人知れず欲望が湧き出てくる。
その気もないのにこんなに俺を誘惑して……一見無垢なように見えて実はとんでもない悪女なのか。