相思相愛ですがなにか?
「月子ちゃん、俺は……」
俺の中で悪魔が囁く。
どうせ数か月後には結婚するのだ。
婚約者である俺が彼女にキスしようが、その先まで進もうが、誰も咎めない。
魔が差したのは一瞬だったが、行動に移すには十分だった。
俺は彼女の両方の細腕を握りプールの縁に身体を押し付けると、己の唇を押し当て強引にキスをした。
「ん……。い……いおりさ……」
息もつかせぬほど何度も角度を変え、がむしゃらに唇を貪り、愉悦に浸る。
迫らない、口説かないなんてもう無理だ。
もう我慢の限界だった。
アスキム王子に月子ちゃんを渡したくない。
月子ちゃんが可愛くて、愛しくて、何でもいいから今すぐ全部俺だけのものにしたかった。
「月子ちゃん……」
一度火がつくと興奮が収まらなかった。
水に濡れた髪を後ろに撫でつけ、Yシャツのボタンを外すと、彼女の首筋に吸い付く。
舌で鎖骨をなぞり、喉元に噛みつくと苦い塩素の味がしたが、それすらも興奮を煽る材料にしかならなかった。
水着の上から彼女の身体をまさぐって、淫らなボディーラインを直接手で確かめると、月子ちゃんから可愛らしい悲鳴が聞こえた。
お願いだ。今すぐ俺を好きだと言ってくれ。
でないと、俺はこのまま……。
世界一野蛮な生き物に成り下がることすらも許容し、彼女の水着の肩紐に手を伸ばしかけたその時だった。