相思相愛ですがなにか?

「い、い……や……!!」

身を守るように自分の身体を抱き締め目に涙を一杯たたえて震えている月子ちゃんを見て、俺は正気を取り戻すことが出来た。

(俺は……なんて最低なことを……)

彼女を押さえつけていた手の力がするりと抜ける。

「ごめん……」

「伊織さん……」

俺は月子ちゃんからを置いてプールから出ると、びしょ濡れのまま廊下を歩いた。

「くっそ……!!」

肌に張り付くシャツが気持ち悪い。

アスキム王子への敵対心から彼女の気持ちも考えずにおぞましい行為に及んだ後悔と、屈辱で頭が沸騰しそうだった。

しかし、これで彼女の気持ちがはっきりした。

……月子ちゃんはまだアスキム王子のことを愛している。

月子ちゃんに全力で拒絶されわずかな希望の道も閉ざされた俺に残された道はひとつしかない。

ポタポタと床に落ちた雫には水以外のものもわずかに混じっていたのだった。

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