相思相愛ですがなにか?

「お待たせ」

そう言ってお兄ちゃんが待つ廊下に出ると、待ちくたびれたお兄ちゃんが眉を吊り上げていた。

「おせーぞ」

「ごめーんね?」

両手を合わせて、軽く首を傾げたあからさまなぶりっこポーズで対応すると、さすがに怒る気力も失せたらしい。

「さっさとしろよ。伊織が待ってるだろう?」

そう、今日の私はいつもと一味違う。

浮かれて飛んでいきそうになる身体をしっかりと地面につけて、お兄ちゃんが運転する車の助手席にするりと身体を滑り込ませる。

今から行くのは南城家御用達の老舗ホテルだ。

今日は、晴れて結婚が決まった私と伊織さんの初顔合わせの日なのである。

(私、本当に伊織さんと結婚するんだ……)

車がホテルへと近づくにつれて、動悸が激しくなっていく。

結婚が決まったとお兄ちゃんから聞かされた時は、思わず夢じゃないかと疑った。

まさか本当にお兄ちゃんが結婚をお膳立てしてくれるなんて思わなかったんだもん。
< 21 / 237 >

この作品をシェア

pagetop