相思相愛ですがなにか?
「盛大な惚気を聞かされた気分だわ……」
撃沈した私は展望台の窓にゴツンと頭をぶつけてうなだれるのだった。
アスキムとルーが恋人同士になるのに、キューピッド役を買って出た身としては羨ましい限りだ。
普通の日本人留学生だったルーとカリウスの王族たるアスキムには、身分の壁や超えるべき障害が数多くある。
周囲の反対を押し切り、愛を貫いた二人の生きざまを私も少しくらい見習った方が良いのかもしれない。
(私も……伊織さんに愛されたい……)
この気持ちを正直に打ち明ければ、私も伊織さんと魂の伴侶になれるのだろうか。
アスキムと別れ、藤堂家の屋敷で伊織さんの帰りを待つ間、私は自問自答していた。
このまま、愛のない仮面夫婦として一生を終えるか。
本心を打ち明けて、伊織さんの愛を勝ち取るか。
どちらにせよ、その気になった彼を拒んでしまったことをまず謝らなければ。
ああ、考えがまとまらない。
私は一体どうすればいいの?
そうこうしているうちに、伊織さんがニューヨークから戻ってくる日がやって来てしまう。