相思相愛ですがなにか？

18.政略結婚の裏側

「婚約を解消しよう」

話し合いがしたいという月子ちゃんを遮って自分の口から出てきたのは、驚くほど意外なセリフだった。

あれほど結婚に固執していたのに、あっさりと婚約解消を申し出るなんて、以前の自分だったら考えられなかった。

これが、月子ちゃんと離れ出張に行っている間に出した結論だった。

お互いのためにはこうするのが一番良いのだと自分に無理やり言い聞かせる。

「南城家には俺から誠心誠意謝罪するから、月子ちゃんは何も気にしなくていい」

「い、おりさ……」

婚約解消を告げると月子ちゃんはやはりショックを隠せない様子だった。

自ら望んだ結婚でもないのに彼女は理想的な婚約者として己の役割を良く演じてくれた。

……しかし、それでは不十分なのだ

俺は君を愛している。

出来ることなら月子ちゃんにも愛されたかった。

結婚さえしてしまえば、いつかは彼女の心が手に入る、愛してもらえるとそう思っていたが、アスキム王子が取り戻しにやって来た今となってはそれも無理だった。

「君はもう自由だ」

……どこへでも行くといい。