相思相愛ですがなにか?

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婚約解消を告げられ南城家に返されてしまった私は、もっぱら自室に引きこもっていた。

布団を頭からかぶり、メソメソと泣いては力尽きて眠り果てるという日を、もう何日繰り返したことだろうか。

一体、私の何がダメだったのだろう。

見た目ばかりに気を遣って、学がなく中身が薄っぺらい私では伊織さんの妻として力不足だった?

それとも、婚約しているのにヤラせてもくれない女だって失望させた?

どちらにせよ、私と伊織さんの結婚が再び持ち上がることはないだろう。

パパは一方的に婚約解消を告げた伊織さんにカンカンで、藤堂家と絶縁する勢いだった。

お兄ちゃんが藤堂家との間に入ってとりなしてくれなかったら、本当に絶縁状を突き付けていただろう。

南城家との縁談がめでたく破談となったことで、伊織さんはかねてから想いを寄せていた女性と結婚するのだろう。

伊織さんの隣に他の女性がいるところなんか想像したくもなかった。

私の頭を撫でた手で他の女の肩を抱いて、私とキスした唇で他の女にキスをするの?

(そんなの嫌だ……!!)

はにかんだ笑顔も、逞しい身体も、あの人の何もかも私のものだわ。

しかし、どんなに歯がゆく思っても、もうどうすることもできない。

婚約者失格の烙印を押された私に精々出来るのは、このベッドの上で相手の女に呪いの念を送ることくらいだった。

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