相思相愛ですがなにか?
アスキムが帰ると部屋には再び平穏が戻ってきたが、それもすぐに破られることになった。
「おい、月子」
アスキムの励ましがきかなかったことを聞きつけたのか、お兄ちゃんがバリケードを乗り越え部屋に乗り込んできたのだった。
「おにいちゃん……」
「お前なあ……。まだ泣いてんのかよ?」
お兄ちゃんは私の泣き顔を見ると、眉根を寄せ呆れたように言った。
本気で恋をしたことがなさそうなお兄ちゃんには、どうせ失恋の痛みなんてわかりっこない。
慰めるどころか、泣いていることを責め立てるなんて、私の精神状態にとどめを刺しにでもやって来たのか。
卑屈になっていじけていると、お兄ちゃんがポンポンとベッドの端を手で叩いた。
「話してみろよ」
人を慰めるなんて面倒なことをお兄ちゃんが買って出るなんて、私は相当ひどい状態らしい。
お兄ちゃんに優しくされるなんて明日は槍でも降ってくるに違いない。
私はモソモソと布団から顔を出し、お兄ちゃんに事のあらましを説明したのだった。