相思相愛ですがなにか?

(一体どんな手を使ったんだろう……)

いくら“無敗の交渉人”と呼ばれ、100以上ある南城家の事業すべてを取り仕切り、いくつもの無茶な取引をまとめてきた実績があるお兄ちゃんでも、今回ばかりは無理だろうと思っていたのに。

夜中に出掛けて行ったと思ったら次の日の朝にはもう話がまとまっていた。

それから、あれよあれよと言う間に藤堂家と南城家の双方に根回しして、気が付けば正式に結婚が決まったのだった。

顔合わせをするのは、いわば最後の意思確認である。

両家が合意してしまっている以上、泣いても笑ってもこの結婚話は簡単には覆らない。

こんな強引な手段をとってしまったことに罪悪感がないわけではないが、それでも伊織さんに会えると思うと胸が高鳴って仕方なかった。

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