相思相愛ですがなにか?

「伊織さんに嫌われちゃったの……」

いいや、最初から好かれてなどいなかった。

だって……。

「伊織さんには片思いの人がいるのよ。だから私と結婚するのが嫌になったんだわ」

上手く行っていたというのはとんだ勘違いで、本命はちゃんと別にいたのだ。

婚約指輪を選んでもらって浮かれて、お情けでくれたキスで舞い上がっていたのがバカみたいだ。

はあっと盛大な溜息をつくと、お兄ちゃんは不思議そうに首をひねったのだった。

「……お前だろ?」

「……は?」

本気なのか、とぼけているのか。冗談も休み休み言って欲しい。

「だーかーらー!!お前のことなんじゃねーの?」

「……何言ってんの?」

質の悪い冗談ならよそでやってと言わんばかりに頬を引きつらせてお兄ちゃんを睨みつける。

「好きでもない女と結婚させてくれって、普通はわざわざ頼まねえだろ?」

「どういうことなの……?」

私の睨みなどどこ吹く風、お兄ちゃんは飄々と答えるのだった。

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