相思相愛ですがなにか?

伊織さんの部屋に記入済みの婚姻届を取りに行き、その足で役所に向かうと、なんとか受付時間ギリギリに到着することが出来た。

私達は仲睦まじくふたりで手を繋ぎながら、婚姻届を指定の窓口に提出しに行った。

「お願いします」

「少々、お待ちください」

書類が受理されるのを待っている間、私は人目を気にせず伊織さんとイチャイチャしまくった。

同じように婚姻届を提出しにやって来た他のカップルも似たようなもので、誰もこちらを気にしていないのが幸いだった。

婚姻届は無事に受理され、これで私達は正真正銘、本物の夫婦となった。

たかが紙切れ一枚、されど紙切れ一枚。

この紙切れ一枚を提出するためにどれほど苦労したことか。

「私……すっごく幸せよ」

私は伊織さんの腕に抱き着き、この幸せを存分に噛み締めていた。

ああ!!なんてロマンティックなのかしら?

政略結婚だと思っていたら相思相愛の恋愛結婚だったなんて。

こんなにステキな政略結婚ってこの世にあるのかしら?

その後、婚約解消から一転し、勝手に婚姻届を提出したことで新しい混乱を生み出すことになるのだけれど。

私と伊織さんはご迷惑を掛けた色んな人に頭を下げ、無事に予定通りクリスマスイブに結婚式を挙げられることになったのだ。

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