相思相愛ですがなにか?
「伊織さんが帰国したって本当!?」
半狂乱で問いかけると、お兄ちゃんは我が家の筆頭執事にコーヒーカップを預け、足を組み替えてこう言った。
「おう。昨日、家にも来たぞ」
人を小ばかにしたようなジト目にうっすらと笑みを浮かべたお兄ちゃんは、何事もなかったかのようにソファにふんぞり返った。
(なんてことなのっ!!)
神様なんていないんだと確信し、足元から崩れ落ちる。
私は枝毛ひとつない自慢のロングヘア―を掻き毟っては昨日の自分の行動を後悔しまくった。
伊織さんが家に来ていたことなどつゆ知らず、私ってばのこのこショッピングに出かけていたなんて……。
伊織さんが家に来るって知っていたら絶対に出かけなかったのに、この兄ときたら全くもって使えない。
「伊織さんが来るって分かってたなら私にも言ってよ!!」
私は涙目になってその辺にあったクッションを手あたり次第、お兄ちゃんに投げつけた。
「だって、お前朝からいないから」
お兄ちゃんは卒のない動作でクッションを避け、的から外れたクッションは調度品に当たる前に執事が慣れた手つきで回収していく。