相思相愛ですがなにか?
ああ、伊織さん。
こんな言い方しかできない私をどうか許してください。
知り合いなら誰でも良いわけではないのです。
私は他の誰でもなく、伊織さんと結婚したいんです。
借り物のような言葉が口をつく中で、ただひとつ
揺るぎないのは……伊織さんが好きっていう気持ちだけだ。
私は伊織さんが好きです。
とても。
とても。
だから、むしろ喜んでいるくらいです。
自ら望んで好きな人と結婚をできるのだ。これ以上ないほどの良縁だ。
「俺も月子ちゃんとなら上手くやれそうな気がするよ」
私の返答を聞いて安堵したように表情を緩める伊織さんを見て瞬時に悟るのは、求められている自分の役割だった。
求められているのは生涯愛情をもって添い遂げる妻ではなく、藤堂家を盛り立てる同盟者。
覚悟はしていたはずなのに、切なさが胸をつく。
(でも、いいの)
……それでも、私はあなたを愛しているから。
伊織さんは椅子から立ち上がると、私の前で片膝をついてひざまずき、手をとり許しを請うのだった。
「月子ちゃん、俺と結婚してくれますか?」
「……はい。喜んで」
こうして、私……南城月子は藤堂伊織さんと結婚することになったのだった。