相思相愛ですがなにか?
「とにかく。結婚についてはこちらで進めますので、父さんは口出し無用です」
これ以上の議論は時間の無駄だろうと有無を言わさず承諾させると、片山くんに目で父さんを廊下まで見送るように合図する。
「あ、そうそう。結婚を急ぐのはいいが、婚約指輪くらいは渡すんだぞ?月子さんに似合う上等なものを選びなさい」
はしゃぐだけはしゃいで気が済んだのか、父さんはようやく執務室から出て行ってくれた。
経営者としては尊敬できても父親としてはイマイチ思慮に欠けるのが玉に瑕だ。
(婚約指輪か……)
どんなものがいいだろうか。
大きなダイアモンドがついた豪華絢爛な婚約指輪か、はたまた繊細な細工が施された至極の一品か。
どちらも美しい彼女には似合うだろう。
むしろ、指輪の方が彼女の輝きに負けてしまいそうだ。
俺は物思いに耽りながら、初めて彼女を見出した時のことを思い出していた。