相思相愛ですがなにか?
「あっ……」
俺は段差につまずいてバランスを崩した月子ちゃんの二の腕を即座に掴み、お腹の下に腕を回て、倒れないようにその身体を支えた。
「大丈夫?」
「ええ、大丈夫……」
上目遣いで俺の顔を見上げお礼を言う月子ちゃんに、とうとう俺の理性が先に限界を迎えた。
間近で見た月子ちゃんの瞳はキラキラと光っていて、吸い込まれるように見入ってしまう。
俺はとっさに目を逸らした。
……これでは、まるで俺の方が良からぬ手合いのようではないか。
仕事を理由にして、女性から遠ざかっていたのがいけなかったのか。
自制心がある方だと自負していたくせにこのざまかと、自分を叱咤してみたが、それも徒労に終わる。
月子ちゃんは明るく好奇心旺盛で、頭の回転も良く、たちまち皆の会話の中心になっていた。
正装をした彼女は会場にいる着飾った女性陣の誰にも引けを取らない。
かつて、自分の立ち位置に疑問を感じていた彼女はもういない。
月日を経て、溢れんばかりの自信と確固たる自己を得た月子ちゃんは気高く、そして……美しかった。
俺はパーティーの間中、彼女の隣に置物のように直立するしかなかった。
話しかけられた内容もすべて耳を素通りし、ただただ月子ちゃんの話す軽やかな声を聞いていた。
……こんなことは初めてだった。
この日、俺は初めて月子ちゃんを女性として強く意識したのだった。