相思相愛ですがなにか?

「お仕事で忙しいのに、付き合ってもらって良かったのかしら?」

「大丈夫。婚約者のためにも時間は作るものさ」

照れ隠しをするように、コホンと咳払いする。

婚約者という響きは新鮮そのもので、どうあっても俺の気持ちを高ぶらせる。

長い間、友人の妹として接してきたのに、昨日今日でいきなり婚約者だなんて慣れないに決まっている。

「それで、どこに指輪を買いに行くの?」

「行けばわかるよ」

月子ちゃんを驚かせたいがために、あえて目的地を伏せる。

「それは楽しみね」

月子ちゃんは俺に乗せられるように、クスクスと小さく笑った。

窓を開ければ春らしい温かな風が彼女の髪をなびかせ、美しい横顔をかき乱していく。

フロントガラスに反射する彼女の姿にしばし見惚れ、運転に身が入らなくなったのは一度や二度のことではなかった。

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