相思相愛ですがなにか?
月子ちゃんに気を取られてばかりいたが、なんとか無事目的地に到着し車を停止させる。
駐車スペースの目の前にある店の看板を見るなり、月子ちゃんは嬉しそうな声を上げた。
「あらっ!!リンネット!!」
両手を合わせながら店名を叫ぶと、俺の二の腕あたりのシャツの生地をつまんで可愛く教えてくれる。
「私、ここのブランドのイメージモデルをやったことがあるの!!」
月子ちゃんは店の看板を指さしながら、楽しそうに話してくれたが、それくらいのことは当然、知っている。
月子ちゃんが身に着けたアクセサリーが、女性を中心に人気になり、リンネットは前年比20パーセントアップの売り上げとなったことも。
月子ちゃん自身もモデルを務めて以来、このブランドを好んで身に着けていることも、すべてリサーチ済みである。
店の選択についてはあえて何も言わず、助手席の扉を開け、立ち上がる彼女に手を差し出す。
「お手をどうぞ」
「ありがとう」
差し出された手を握り、座席から颯爽と立ち上がる月子ちゃんを、俺はうっとりと眺めていた。