相思相愛ですがなにか?
「連絡していた藤堂です」
「こちらへどうぞ」
店員はそう言うと人の多い店頭ではなく、店の最奥にあるVIPルームに俺達を案内した。
VIPルームではネイビーのスーツにクラシックなシルバーフレームの眼鏡をかけた男性が待ち構えていた。
「デザイナーの久喜です」
「わあっ!!お久しぶりです!!」
「月子さんもお変わりないようで」
久喜と名乗った男性は月子ちゃんと面識があるのか、俺そっちのけで話が盛り上がっていく。
のけ者にされたことを不快に感じながらも、会話に加わる隙を伺っていると月子ちゃんがこの男との関係性を補足してくれた。
「久喜さんはリンネットの新進気鋭のデザイナーで、私がポスターで身に着けたアクセサリーをデザインしたのも彼なの」
ほらあれっと指さしたのは、店内に貼られているリンネットの販売促進用ポスターだった。
月子ちゃんが入店した男性全員に平等に微笑むその鎖骨の間にはバラを模したネックレスが煌めいていた。