相思相愛ですがなにか?
「この度はご婚約おめでとうございます」
デザイナーの男性はようやく俺の存在を思い出したのか軽く会釈をした。
そして、俺は本能的に気が付いてしまった。
……この男、月子ちゃんに気がある。
髪の毛一本ほども婚約を喜んでなどいない。
その証拠に一ミリたりとも目が笑っていないではないか。
「どうもありがとう」
俺は負けじと正々堂々と真正面から言い返した。
俺は南城家から認められた月子ちゃんの婚約者だ。
ぽっと出の若造に気後れするのも、ちゃんちゃらおかしい。
「こちらにどうぞ」
ソファに座るようにすすめられ腰掛けると、リンネットのアクセサリーが入った化粧箱が即座にいくつも運ばれてきた。
「指輪はオーダーメイドをご希望とのことでしたので、デザイン用のサンプルをいくつかお持ちしました」
店頭にある既製品はもとから買うつもりがない。
月子ちゃんに相応しいものをあつらえるために、婚約指輪はオーダーメイドするつもりだ。