相思相愛ですがなにか?
「省略できない?」
私はもっと手っ取り早く伊織さんと結婚したいの。
入籍だけパパッと済ませて、はい結婚ってわけにはいかないの?
「省略できるわけねーだろ、このバカ!!」
甘い考えを吹き飛ばすように、お兄ちゃんは再び私の頭をスパーンとはたいた。
「んもう!!痛いじゃない!!」
なによ、なによ。お兄ちゃんのおたんこなす!!
少しくらい不満を言ったっていいでしょう?
あーあ……我が家と伊織さん家がちょっとばかし普通のお宅とは違うばかりに事が大きくなっていく。
私としてはさっさと入籍してしまって、早いところ妻の座を確保したいところなのに。
「こちとらクソ忙しい中時間を割いてやってんだ。感謝しろよ」
目下のところ私の結婚式の準備がお仕事になっているお兄ちゃんは、たたえ敬えとばかりに偉そうに腕を組んで仁王立ちである。
「まずは結納。その後に婚約パーティーだ。招待客リストチェックしとけよ。俺の顔に泥を塗ったら承知しないからな」
お兄ちゃんは念を押すようにそう言うと、お気に入りの猫脚テーブルの上に、分厚い紙束を置いて帰って行った。