相思相愛ですがなにか?
私を差し置いてどこの女が伊織さんと結婚なんかしようというのだ。
自慢ではないが、こちとら片思い歴10年なのよ?
伊織さんがどこの誰かも知れない女と結婚するなんて絶対に嫌だ。
ましてや、このまま手をこまねいて見ているだけなんて、断じてありえない。
「ねえ、お兄ちゃん……」
私はお兄ちゃんに助力を求めるべく、猫なで声で擦り寄った。
「伊織さんのお見合い相手に私を推薦してくれない?」
……それは、まさに無謀とも思える計画であった。
「はあー?」
お兄ちゃんは私のおねだりに思い切り顔をしかめ、ふざけるのもいい加減にしろと目で訴えた。
「お兄ちゃーん!!一生のお願いよ!!」
私はサービスとばかりにお兄ちゃんの肩を揉み、腕に絡みついて懸命に訴えた。
これぞまさしく一生お願いである。
こんなことをお願いできるのはお兄ちゃんしかいない。
伊織さんと結婚できるなら、クローゼットの中のバッグも靴もすべて売り払ったっていいし、なけなしの全財産をお兄ちゃんにすべて渡したってかまわない。
伊織さんと結婚することは、私の悲願である。