相思相愛ですがなにか?
どれだけ言葉を尽くして慰めても、月子ちゃんは帰りの車の中でもため息ばかりをついていた。
心ここにあらずといった様子でぼうっと窓の外を眺めている様子を見て、気晴らしにでもなればと、路肩に車を停車させ、運転席のダッシュボートに忍ばせておいた指輪を取り出す。
俺はまだ紐が掛けられた状態の包みを解き中身を取り出すと、膝の上に行儀よく重ねられていた彼女の左手を取り、薬指に指輪を差し入れた。
「え……?」
我に返った月子ちゃんが驚きの声を上げる。
「これ……。婚約指輪が出来るまで……嵌めておいてくれる?」
男除けに買った指輪が早速役に立つとは思わなんだ。
指輪にどれほどの効力があるかわからないが、ともすれば消滅してもおかしくない話だった婚約が目に見える形になったことは思いのほか気分が良かった。
月子ちゃんは指輪と俺の顔を交互に何度も見た後、わあっと喜びを爆発させた。
「嬉しいっ……!!」
月子ちゃんの花のような笑顔が見られて、俺はホッと胸をなでおろした。