相思相愛ですがなにか?
「ありがとう、伊織さん!!」
中央に鎮座する大粒のダイヤモンドは、彼女の左手薬指で誇らしげに輝いている。
選んだ指輪は既製品ではあるが、素材も細工も上等なものだし、なにより月子ちゃんのことだけを考えたおかげで彼女の細い指に良く似合っている。
「私……伊織さんがくれたこの指輪があれば、他の婚約指輪は要らないわ」
「でも……」
「いいんです。これだけでいい……」
指輪をした左手を頭上に掲げうっとりと眺める月子ちゃんを見て、あの男に狂わされた心が落ち着き穏やかな気持ちになれた。
ここまで喜んでもらえると、選んだかいがあるというものだ。
適切なアドバイスをくれた片山くんには、俺のポケットマネーから金一封でも出しておこう。
南城家へと車を走らせる最中、月子ちゃんは何度も指輪をさすったり、指で転がしたりしていた。
俺はその度にさながら自分が可愛いがられているようで、妙にくすぐったい気持ちになった。