相思相愛ですがなにか?
先日の件で嫌というほど思い知ったのだが、月子ちゃんはいささか魅力的すぎる。
誰もが心奪われ、虜になり、ああいった信者を何人も作り出しているのだろう。
その中には彼女のお眼鏡にかなう男もいたかもしれない。
ひょっとすると……俺と婚約する前に恋人がいたんじゃないか?
月子ちゃんほどの女性が恋人もおらずフリーであるはずがない。
結婚にこぎつけるのに頭がいっぱいになっていて、恋人の有無にまで頭が回らなかったのはとんだ失策だった。
冬季緒は何も言っていなかったが、こと恋愛事に関してあいつが当てになったことは一度もない。
「専務、こちらの書類にも目を通していただけますか?」
「ああ」
俺は、判を押し終えた書類を片山くんに渡すと、デスクに頬杖をついて新しい書類に目を通し始めた。
まあ、今更考えても仕方ない。
もう婚約してしまったのだし、恋人がいたのだとしても過去は清算して、潔く忘れてもらうしかない。
要は過去の男のことなど気にならないくらい、俺に惚れさせてしまえばいいわけだろう?
しかし……どうやって?