相思相愛ですがなにか?
結婚そのものより、月子ちゃんを口説き落とすことの方よっぽど難しい。
彼女にとって俺はあくまでも頼れる兄の延長のような存在である。
大体、俺と月子ちゃんはそもそもの性格が真逆なんだ。
明るく社交的で私生活も華やか、自由奔放な彼女に対し、俺は昔から派手なことは苦手で、性格がいまいち面白みに欠けると冬季緒からしょっちゅう指摘されている。
これまで付き合ってきた女性とタイプが異なるという意味でも、彼女は未知数だった。
(さて、どうしたものか……)
左手の人差し指でデスクをトントンと叩いては止め、叩いては止め、良い方法がないものかと思案する。
「どうしました?」
「いや……。月子ちゃんを口説くにはどうしたもんかと……」
書類から顔を上げ片山くんを見ると、彼女はキョトンとした表情で俺を凝視していた。
(もしかして今、口に出していたか……?)
没頭するあまり仕事中だということを失念した上に、うっかり心の声まで漏らすなんて大失態だ。