相思相愛ですがなにか?
「なに?お前、そんなに伊織と政略結婚したいのか?」
お兄ちゃんはうっとうしいとばかりに私の腕を振りほどきながら尋ねた。
我を忘れていた私は正気に戻ると、頬を染め静かに頷いた。
他人から改めて恋心と下心を指摘されるのは、また別の意味で恥ずかしいのだ。
「そんなに結婚したいなら自分で立候補したらどうだ?」
「そんなこと出来るはずないでしょう!!だからこその政略結婚なんじゃない!!」
もうお兄ちゃんのバーカバーカ!!
人の心の機微なんか理解しちゃいないロボット人間!!
10年も片思いしていたなんて知られたら、気持ちが重すぎて気味悪がられるかもしれないでしょ?
政略結婚なら互いの意思は二の次で、会社と家柄のつり合いさえ取れていれば手っ取り早く結婚できるし、断られる心配もない。
どこの誰かも分からないぽっと出のお嬢様よりも、何を隠そう親友の妹である私の方が伊織さんも気心が知れていて結婚するには良いに決まってるもん。
しかし、そんな自分本位な理屈が通用するほど我が兄は甘くはなかった。