相思相愛ですがなにか?
「何がどうなってあの堅物の伊織くんと結婚することになったんですか?月子さんも、伊織くんってば全然話してくれないんだもん」
自分ひとりが除け者のように扱われ雫ちゃんは拗ねているのか、私達ふたりへの不満を露わにした。
「ああん!!ごめんね、雫ちゃん!!」
私はご機嫌を取るように、雫ちゃんの額に己の額を擦り付け許しを請う。
「ふふっ。良かったですね。初恋が実って」
雫ちゃんはぎゅっと私の手を握って、この度の婚約を祝福してくれた。
雫ちゃんと私は10年来の友人だ。
もちろん伊織さんへの恋心はとうの昔に雫ちゃんに打ち明けており、伊織さん関連のあれこれの情報源は言わずもがな、彼女である。
陰ながら応援してくれていた雫ちゃんには婚約の真実を正直に話すべきだろう。
「実は……」
私は婚約に至った経緯を誰にも聞かれないように雫ちゃんに耳打ちした。
「政略結婚を仕掛けたのは月子さん!?」
シーっと唇に人差し指を立て静かにするように訴えると、雫ちゃんは慌てて声のボリュームを抑えた。