相思相愛ですがなにか?
8.お引越し
「荷物はこれだけ?」
「ええ。あとは業者の人が運んできくれるから」
伊織さんは荷物がパンパンに詰まったボストンバッグを文句も言わず車のトランクルームに積み込んでくれた。
「本当に行くの……?」
「パパ……心配しすぎよ……」
少しはお兄ちゃんを見習ってほしい。
可愛い妹が嫁ぎ先に引っ越すというのに、見送りに来たはずのお兄ちゃんは大きな口を開けてあくびをしている。
私は飼い主に叱られた仔犬のようにシュンとしているパパにハグすると、伊織さんと共にまもなく南城家を出発した。
婚約パーティーを経て、私と伊織さんの結婚が公になった今、かねてより計画していた通り、藤堂家にお引越しすることになった。
結婚式の準備はもちろんのこと、藤堂家の嫁として手ほどきを受けるためでもある。