極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
世界に名を轟かせる大企業であれば、妻帯者であるのは信頼度も違うのだろう。
そう考える貴行を理解できなくもない。
ただ、ひとつ気がかりがある。
「結婚の日取りはわかりました。ひとつ確認したいんですけど、仕事を辞めないとダメですか?」
オーシャンズベリーカフェには再就職したばかり。これからどんどん仕事を覚えて、早く一人前になれるようにと努力をしていたところ。
中途半端な形で尻切れトンボのごとく辞めるのは、できれば避けたい。
「それは陽奈子に任せる。続けたければ続ければいい」
「それじゃ続けさせてください」
結婚の話が持ち上がってから決定するまで、わずか一日足らず。
また、結婚式をあげるまでの日数も二週間と少しときている。
迷っている暇もなければ、深く考える時間もない。
怒涛の如く訪れた展開に戸惑いながら、陽奈子は貴行の運転する車に身を任せた。