極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
入社後まもなくして結婚し、すでに二歳になる娘の母という顔ももつ。
保育園の迎えがあるため、今は午後四時までの育児時短勤務を取得しており、それ以降は用事があれば別の秘書が貴行の補佐をしている。
当初は別の秘書に交代したほうがいいのではないかと秘書室長から打診があったが、まじめに仕事をこなす歩美を解任する必要はないと断った。
「お祝いはすべてお断りしてくれ。会社とは関係のない私的なことだ」
結婚の話をわざわざ公表したわけではないが、あっという間に関係先には知れ渡ったようだ。
披露宴も親族だけを招待した、ごく小さなもの。陽奈子のことは今後、妻同伴のパーティーなどがあったときに紹介しようと考えていた。
「承知いたしました。では、すぐに文書を手配いたします」
「よろしく頼むよ。このあとの予定は?」
丁寧に頭を下げた歩美に聞き返す。
「各部の部長とのミーティングが入っております。船舶燃料油の硫黄分の規制について話し合いの場をとのことでした」