極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

「場所は?」
「隣のディスカッションルームでございます」


歩美に「オッケー」と答え、プレジデントチェアから立ち上がる。

来年から、船舶の燃料油に含まれる硫黄分の濃度規制が強化されることになっている。規制値が現行の3.5%から0.5%以下とする大幅な削減値だ。

すべての船舶が、この規制に適合する燃料油を使用するか、排ガス洗浄装置を使用するか、もしくは代替燃料を使用するかの対策を講じなければならない。
海運業界にとっては痛い、コスト負担である。

ディスカッションルームには、すでに各部長たちが顔を揃えていた。貴行が入室すると全員が立ち上がり、頭を下げた。


「では、早速始めさせていただきます」


輸送営業本部の部長である高井(たかい)の音頭で会議がスタートする。


「まずは、規制に適合する燃料油の使用の是非についてですが、硫黄分の含有量が低い低硫黄C重油や軽油は、従来の高硫黄C重油より割高なのはみなさんもご承知のことかと思います」
「具体的にどのくらいの上昇率になる?」

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