極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
二度目のキスは祈りをこめて
そうしてめまぐるしく時が過ぎていく。
結婚式までの二週と少しの間に新居に荷物を運び込んだり、結婚式の衣装合わせに出向いたり。貴行が手配してくれたブライダルエステなるものにも通った。
連帯保証人となった豊が負わされた二億円の借金は、即日、貴行が手配して事なきを得ている。
豊が工場の社長であるのは変わりないが、実質的な経営権はツキシマ海運に移ったようなものだ。
身分違いも甚だしいため、貴行の家族に挨拶に行くときにはありえないほど緊張したけれど、貴行の母・阿佐美(あさみ)は拍子抜けするくらい気さくな人柄だった。
一点だけ驚かされのが、そのファッションセンス。六十歳を目前にして花柄でふりふりという、姫スタイルだったのだ。
貴行から事前に『会っても驚かないように』と注意はされたものの、まさかそうくるとは思わず家族三人ともすぐには言葉を見つけられなかった。
年齢よりもずっと若々しくかわいらしい顔立ちのため、似合っているのがこれまたすごい。
その容姿に見合ったふんわりとした口調と雰囲気は、名家の出身を思わせた。