極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
控え室にひとりとなり、式に臨む緊張感が徐々に包み込んでくる。
(私、本当に結婚するんだ)
当日を迎えて、ようやくその実感がわいてきた。
これまで準備に追われてきたけれど、どことなく他人事のように感じる部分があった。
今やっと、花嫁である自覚が芽生えた気がする。
鏡に映る自分をじっと見つめていると、控え室のドアがノックされた。開いた扉から入ってきたのは新郎の貴行だ。
その姿に、ハッと息を飲まずにいられない。
ロイヤルブルーのフロックコートに同色のボウタイを着け、真っ白なシャツとのコントラストが目にも眩しかった。
整髪料できっちりとまとめられた髪がひと筋額にかかり、それが妙に色気がある。
いつにも増してドレッシーな貴行に、陽奈子は知らず知らずのうちに見惚れていた。
貴行はドアから入ったところで、陽奈子は鏡の前で立ち上がった状態で、互いに見入ったまま十数秒が過ぎていく。
「あ、あの……変でしょうか」
我に返った陽奈子が、ドレスのレースを握りしめて尋ねる。