極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

唐突に持ち出された話が、陽奈子を少しだけ困惑させた。


「言われてみれば、そうですね」


プロポーズ以前に結婚が決まっていたため、当然といえば当然かもしれない。


「やはりそういうのはあったほうがいいだろ」


裏に〝気持ちは伴わなくても〟という言葉が隠されているように感じ取れた。


「私はどちらでも……」


婚姻届は金曜日に貴行の代理人が役所に提出済み。ふたりはすでに正真正銘の夫婦なのだ。
今さらプロポーズと思わなくもない。

ところがあやふやな返答を気にも留めず、貴行は陽奈子の名前をそっと呼んだ。とても優しい声だった。


「俺と結婚してほしい」


続けて貴行が放った言葉が、陽奈子の胸に深く響く。

< 120 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop