極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
唐突に持ち出された話が、陽奈子を少しだけ困惑させた。
「言われてみれば、そうですね」
プロポーズ以前に結婚が決まっていたため、当然といえば当然かもしれない。
「やはりそういうのはあったほうがいいだろ」
裏に〝気持ちは伴わなくても〟という言葉が隠されているように感じ取れた。
「私はどちらでも……」
婚姻届は金曜日に貴行の代理人が役所に提出済み。ふたりはすでに正真正銘の夫婦なのだ。
今さらプロポーズと思わなくもない。
ところがあやふやな返答を気にも留めず、貴行は陽奈子の名前をそっと呼んだ。とても優しい声だった。
「俺と結婚してほしい」
続けて貴行が放った言葉が、陽奈子の胸に深く響く。