極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
そこに心はないとわかっているのに、ときめきを感じずにはいられない。高鳴る鼓動が耳の奥でその存在をアピールしていた。
「返事は?」
形式的なものに過ぎないのに。今さらプロポーズ?と思ったくせに、その言葉の威力を前にして降伏状態だった。
「……はい。よろしくお願いします」
貴行の指先が陽奈子の頬に添えられる。導かれるように見上げると、ゆっくりと貴行の顔が近づいてきた。
目を閉じた瞬間、唇が重なって離れる。
二度目のキスだった。
「今日はずいぶんとしおらしいな。マルタ島での勢いはどうした」
貴行が軽い口調でからかう。
「なっ……。本当の私はいつもこうなんです。おとなしいんです」