極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

青く澄んだ空と芝、白い祭壇のコントラストが美しい。

椅子に座って待っていた親族たちは陽奈子たちの登場に気づき、感嘆の声を漏らす。すでに神父も控えており、すぐに式が始められた。

豊と歩く赤いバージンロード。
その先で待つ新郎のもとにたどり着くと、豊は貴行に陽奈子を託した。

耳に心地のいい神父の声と、隣に立つ貴行の存在が陽奈子の緊張を和らげていく。そのくせ、神への宣誓の場面で胸が異様なほどに高鳴るのはどうしてか。

不意に、マルタ島で貴行と過ごした時間が走馬灯のように蘇る。

出会いは風が運んだ偶然。カメラがもたらせたもの。
第一印象は最悪だった。
麗しい容姿からは考えられないほどの毒舌が、普段怒ることの少ない陽奈子をイラつかせた。その口調とは裏腹に紳士的な一面もちらつかせるとは、なんて厄介な男だろう。

最初の印象が悪かったせいで、少しの優しさが何倍も何十倍にも感じるのは一種の罠。なんて巧妙なトリックなのか。

そんな中での突然のキスと翌日のドタキャンは、持ち上げられて一気に突き落とされた気分だった。

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