極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

おそらく彼女がこれまでに用意していた縁談は、ツキシマ海運に大きな利益をもたらせるような大企業や都市銀、政治家の娘だったろうから。

智子の様子から、貴行と陽奈子の結婚に納得していないのは手に取るようにわかった。


「あんまり美しいから、おばさまを驚かせたようですね」


貴行はあえてそう返し、余裕の笑みを浮かべる。


「た、貴行さんっ……!」


智子を怒らせるのではないかと思い、陽奈子は慌てて貴行の腕を掴んだ。実際に、智子の鼻の穴が大きく膨らむからヒヤヒヤしてしまう。

ところが貴行はその手に自分の手を重ね、大丈夫だといったようにトントンとした。


「私へのあてつけのつもりなのかしら?」


ものすごい威圧感が智子から漂ってくる。

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