極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

殺伐とした空気が、阿佐美の登場により一気にほんわかとしたものになる。


「それにね、とっても英会話がお上手らしいの。海外を相手にする海運業の社長夫人に、こんなにふさわしいお嬢さんはいないわ」


恥ずかしいほどの褒め言葉に陽奈子は恐縮するいっぽう。

阿佐美は宥めるように背中をさすりながら、陽奈子たちの前から智子を引き離していく。去り際に〝大丈夫よ〟と目配せをよこした。

そこでようやく陽奈子はホッと息をつく。


「悪かったな」


貴行に謝られ、「いえいえ」と首を横に振った。

こういった事態はある程度予想していたものだ。家柄が違うから仕方のない話だろう。
二億円の借金を肩代わりした話も伝わっているだろうから。

智子だけでなく、ほとんどの親族が今回の結婚に心から賛成していないのは、どことなく冷やかな態度からわかった。
せめてもの救いは、貴行の母親が味方についてくれていることだ。そしてそれは、なによりも心強い。

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