極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

智子とのやり取りを見ていた萌々が、抜き足差し足といった滑稽な様子で陽奈子の元へやって来た。身内の顔を見ると、肩から力が抜ける。


「陽奈子、大丈夫だった?」
「うん、平気」


実際には迫力のすごさに身体が金縛り状態だったけれど。
阿佐美が助けに入らなかったらと思うと、ちょっとした恐怖だ。


「お父さんもお母さんもビビっちゃって、隅のほうに隠れるようにしてるよ」


萌々の視線をたどっていくと、その言葉の通り、ふたりは隅の椅子に所在なく座っていた。
完全に除け者状態だ。


「萌々さん、申し訳ありません。ちょっとお父様とお母様のところに行ってきますので、少しの間、陽奈子のそばにいてもらえますか?」
「あ、はい」


萌々の返事を聞くや否や、貴行が陽菜子の両親のもとへ早足で向かう。それに気づいた豊と未恵はいそいそと立ち上がった。
貴行の言葉に頭を掻いたり声を立てて笑ったりするふたりを見て、胸を撫で下ろす。

< 129 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop