極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
楽しげに話す様子をなんとはなしに眺めていると、萌々に肘で小突かれた。
「貴行さん、優しいところがあるじゃない」
そうなのだ。貴行は意外にも優しい。
重要な部品を作っているとはいえ、下請けの工場経営者である陽奈子の両親を下位に見ることなく気にかける姿には陽奈子も感心させられる。
「イケメンで気遣いもできるうえ社長なんて、優良物件もいいところだわ。こんなことなら、結婚しないで私が嫁ぎたかった」
「おねえちゃんは、政略結婚は嫌って言ってたじゃない」
「ええ? そうだった?」
萌々が盛大にとぼける。
「そうよ。絶対に逃げるって」
「それじゃ、それは撤回。ねぇ陽奈子、今から私と旦那様をチェンジしない?」
冗談めかして小首を傾げた萌々は、最後にペロッと舌を出しておどけた。
「それはいいとして、お屋敷もすごいけど、貴行さんの親戚がみんなすごいね」