極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

「コーヒーでも淹れますか?」


まだ水すら出したことのないキッチンは、リビングのすぐ先にある。機能的なアイランドキッチンだ。


「いや。今は大丈夫だ」


貴行は両足の上に肘を突き、両手で顔を拭った。
その隣に少しスペースを空けて、陽奈子がちょこんと座る。


「貴行さん、今日はありがとうございました」
「改まってどうした」
「おばさまに言ってくださったことです」


貴行は、イノシシもびっくりの猛烈な勢いで突進してきた智子を華麗にかわしてしまった。


『おばさまがご紹介くださるのは、自己中心的で傲慢、自分を着飾ることでしかアピールできないような女性ばかりでしたから。他人を思いやれるようでないと、トップに立つ人間を支えることはできません』


陽奈子は、そう言い放った貴行を思い返した。
裏を返せば、陽奈子はその逆の人間だと。

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