極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
妙なことを想像したせいで顔がカーッと熱くなる。
「なに、ひとりで寂しいなら一緒に入ろうか」
マルタ島での出会いを思い出させるような意地悪な顔だ。
「だっ、大丈夫です……!」
陽奈子をひらりと身を翻し、右手と右足が同時に出るほど不恰好な歩き方でリビングを飛び出した。
楕円形の大きなバスタブに顎の下まで浸かる。
(どうしよう。どうしよう。……どうしよう。ここから出たら、きっとそのあとは……)
ぽわんと浮かんだ妄想が、ただでさえ熱くなった頬をさらに赤らめる。
「キャーーッ!」
思わず漏れた悲鳴は広いバスルームに反響して、より大きなものになった。